2011年04月17日

読後感“にんげん蚤の市”

  高峰秀子著 平成9年1月発行 文芸春秋社

 高峰秀子さんは昭和を代表する日本の女優さんである。
 彼女が子役としての映画デビューは1929年。
 私が初めて見た映画は1954年の「24の瞳」。最後が1973年「恍惚の人」。
 彼女の自伝的小説「私の渡世日記」を読んだのが1998年。
 この本で彼女の壮絶ともいえる人生を知った。
 彼女自身の美貌と才能で、金銭的には裕福だったに違いないが、決して幸せな人生とはいえなかっただろう。
 ただ、同じ映画という世界で松山善三氏と知り合い、結婚されてからは、この「にんげん蚤の市」にも垣間見られるように、平穏で幸せな人生だったのではなかろうか。
 華やかで限られた世界で暮らしてこられたとは思えない、常識と博識を持ち合わせた人だということが、彼女の生きざまに覗われる。
 この本は10編からなる随筆集である。もともと「オール読物」に連載されたものを編集されたものと思われる。
 なので、その時その時のリアルタイムで起きたこと思ったことを書き綴ってある。
 また、1997年以降のことなので、私からいえばつい最近のことだ。
 秀子さんが普通の主婦感覚であることは興味深かった。
 宅配便の人との交流とか、司馬遼太郎さんご夫妻との交流は、彼女の人間の温かさを感じた。
 「勲章の重さ」では、歯に衣を被せぬ物言いが、彼女の物おじしない明るい性格が現われていた。
 しかし彼女はやはり我々凡人とは違う。こんなにりっぱな文章が書ける有能な人だということは言うまでもないことである。
 彼女は、昨年、天国に召された。86歳だった。残されたご主人の松山善三さんは1つ下の85歳。晩年「年金旅行」に書かれているように、とても仲睦まじく密やかに生活しておられたので、さぞかし気を落としておられることだろうと、お察しする次第である。
 私も彼女の訃報を知った時は、人は誰でもその時がくれば、否応なくこの世からいなくなってしまうのだと、とても空しく思ったことだった。
 彼女はもうこの世にはいないし、私もいずれこの世からいなくなる。
 この世は、うたかたの夢物語である。
 そう考えれば原発事故もうたかたなのか。
 早くそうなればいい。

posted by hidamari at 21:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 読後感・映画の感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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