2011年04月26日

読後感“銀婚式”

  作者 篠田節子 (毎日新聞 日曜くらぶ連載小説)

 毎週楽しみにしていた新聞小説「銀婚式」が4月24日(日)で完結した。
 私にはあっという間の50回だった。
 読み終わって、ハッピーエンドだったことにホッとし、しばし余韻に浸った。
 そして小野利明さんの挿絵をつくづく眺めた。
 息子の結婚式が終わった夜、モーニング姿の主人公高澤修平と、黒留袖姿の妻由貴子の寄り添った姿である。素晴らしい絵だ。
 正に絵に描いたような中年の理想の夫婦像なのだが、この2人、実は元夫婦で、息子の結婚式で夫婦として取り繕っただけのものだった。
 高澤修平は一流大学卒業後一流企業の証券マンとして海外勤務、その間、結婚、長男の誕生と、エリートコースを順風満帆に走っていた。
 ところが、それまで企業戦士として仕事一途に頑張っていた彼に、思わぬ試練が訪れる。妻から言い渡された離婚だった。それから、時代の波まで変わっていく。リーマンショックによる会社の倒産、再就職先の保険会社では鬱病になり退職。しかし再々就職で大学講師となってから、彼に新たなパートナーが現れ、彼女との新生活がもたらされるかに見えた。
 そんな時、元妻から息子の教育の協力を求められる。彼は、結婚を決めている彼女をいったん横において、息子の面倒をみる。横に置かれた彼女は、前の家族を引きずっている彼に嫌気がさして他の男性と結婚してしまう。
 孤独に苛まれる高澤の元に届いた、息子の結婚話し。
 元妻は、老実母をずっと自宅で介護していたが、先ごろ見送ったばかり。後は息子だけが生きがいだった。その息子が学生結婚、しかも出来婚して遠く九州で暮らすという。この先、何を生きがいにすればいいか戸惑う。
 それぞれ役目を終えた元夫婦の2人が、再びよりを戻すのに理屈はいらなかった。
 それが、挿絵にしみじみと描かれている。
 期せずしてこの元夫婦は、結婚してから25年たっていた。離婚していた14年は決して無駄ではなかったろう。違う道を歩いてきたことで、お互いを理解出来るようになったのではないだろうか。
 これは男目線の小説だが、作者が女性でもあり、女性の観察力が素晴らしいと思った。私はずっと由貴子に肩入れして読んでいた。
 それで、優しく変身したご主人が帰ってきて、ほんとうに良かったなあと、心から思ったのである。

posted by hidamari at 23:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 読後感・映画の感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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