2011年07月08日

映画の感想(裸の島)

 1960年(昭和35年) 日本(近代映画協会)映画
 監督 新藤兼人 主演 殿山泰司 乙羽信子

 この映画が新藤兼人監督の映画で、モスクワ国際映画祭でグランプリを取ったというので話題になったことは、何となく覚えている。
 その後も、名画として、雑誌や新聞、あるいはテレビで映像や写真を紹介されているので、乙羽信子さんのタゴを天秤棒でかついだスタイルは脳裏に焼き付いていた。
 映画では、そのシーンがいきなり出てきた。しかも上映時間95分のうち実に3分の2くらいは、夫婦2人の水運びシーンである。
 乙羽さんはこの時まだ36歳、正直いって、こんなキャシャな身体つきで、この過酷な労働が実際には出来るはずないだろう。
 アップになると、彼女ではやはり美し過ぎる。
 毎日、伝馬船で向側の島へ水を汲みに行き、かついで坂道を登る。水は生活にも畑にも使う。2人の子供はご飯炊き、風呂沸かし、時には現金稼ぎに鯛釣りもする。
 昔ながらの原始生活で、親子4人が運命共同体で生きているが、私にはどうしても不自然に見えた。
 時代からすると、この子供たちと私はほぼ同じ年代、小作農制度もすでに廃止されていたはず、しかも孤島とはいえ、広島県三原市はそう遠くない。こんなに世間とかけ離れた生活をしていたとは信じ難い。
 厳しい自然に立ち向かってモクモクと働く姿に同情はするが、父親は水汲みばかりしないで、もうちょっと知恵を働かせればいいと思うのは私だけか。
 さつま芋に炎天下水をかけるなんて聞いたことないし、ならば土地にあったミカン栽培等に切り替えたらいい。
 梅雨には雨が降るのだから、ため池でも作ればいい。
 人がやっと通れるような坂道なら、もうちょっと広くして階段にするとか、滑車とロープでタゴを引き上げるとか、当時でも考えられたはずである。
 映画が始まってすぐ私の頭に浮かんだのは、誰かが病気で亡くなるのでは、というのだった。
 案の定、ラストにその通りになった。長男が急病になる。お医者さんが間に合わず命を落とす。
 その時初めて母親が自暴自棄になる。
 しかし、時が経てば、また水汲みの生活が始まった。

 映画を見終わって思ったことは、新藤さんは何を言いたいのか、私には理解出来なかった、ということだ。
 いうまでもなく娯楽映画ではない。かといって何かメッセージがあるとは思えない。記録映画にしては、嘘っぽい。
 ただ、印象的だったことは、セリフレスであったにも関わらず、全くそれを感じさせなかったこと。音楽も効果的だった。
  
 図らずも私はこの映画の子供と同じ年代。
 小さい頃我が家は、井戸も、もちろん水道もなかった。
 母は、近所のお宅の井戸から貰い水して、天秤棒で担いで家へ運んでいた。
 お風呂もそれで沸かした。
 父はこれがどんなに重労働か知っていた。
 それで1人で5メートルの井戸を掘った。
 その後、井戸から台所へモーターで水道をひいた。
 私は父を尊敬した。
 父はまだ30代後半だった。
この映画を見て我が父の偉大さを改めて思った。
 

posted by hidamari at 23:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 読後感・映画の感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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