2011年07月16日

ミニミニ小説・牡丹 bR5

 入院生活はアサミにとって好都合だった。なにしろ産科は病院とはいえ幸せオーラが満ち溢れている。本来ならアサミは自宅で1人寂しく出産を待たなければならないのだ。
 アサミのいる部屋は4人部屋だった。妊娠初期で切迫流産危機の若いママが2人、もう1人はアサミと同じ妊娠後期で早産の危機がある経産婦だった。昼間はだいたいカーテンが開かれているので、おのずと4人は話すようになり、いつも賑やかだった。
 入院生活は規則正しい時間割が組まれていた。
 安静が基本なので、常にベッドに横たわっているのだが、朝食、薬、検温、牛乳、昼食、薬、検温、おやつ、昼寝、夕食、薬、検温、就寝という日程表のとおり、時間は過ぎていった。
 その間、夫々の家族が訪れた。若いママ2人には、夕方夫々決まった時間に若い旦那さんが訪ねてきた。経産婦の里山さんには男の子2人がいて、昼間時々お祖母さんがその子供たちを連れてやってきた。旦那さんも夜時々やってきた。
 アサミの元へは母のミナが、毎日夜になってやってきた。
 旦那さんがやってこないアサミのことを、他の3人は不思議がっているに違いなかった。
 アサミ自身も、自分がシングルマザーであることを改めて認識させられる、家族訪問風景だった。
 入院は2週間と言われていたが、そんな時、惨めな自分が哀れになり、早く退院したいと思うのだった。bR6へ
(カテゴリー〈短編小説・つぶらなひとみ〉に連載)

posted by hidamari at 22:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 短編小説・つぶらなひとみ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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