2011年08月13日

夢小説(風に消えたお孫ちゃん)

 孫が欲しくてたまらない、おじいさんとおばあさんがいました。
 2人はいつも神様にお祈りしていました。
 「私たちはもう先が長くありません。1日も早く孫に会いたいのです。どうか孫をお授けください」と。
 ある日、その願いは意外な形で実現しました。
 突然おばあさんに孫が生まれたのです。
 おばあさんのお腹が大きくなった訳でもないのに、ある朝かわいい女の赤ちゃんがおじいさんとおばあさんの間に寝ていたのです。
 2人は「孫だ、孫だ」と大喜びしました。
 女の子は、たいそう美人さんでした。
 ところが、そのお孫ちゃんは、毎日、目に見えて大きくなり2〜3年もすると、もうりっぱな大人になってしまいました。
 おじいさんとおばあさんは、唖然とするしかありません。
 抱っこする暇もなかったし、髪をすいてやることも出来なかったし、お手手つないで散歩も出来なかったし、かわいいお洋服を縫ってあげることも出来なかったし、お料理を教えてやることも出来なかったのですから。
 今では毎日出かけて行っては、夜遅くしか帰ってきません。
 おばあさんは、思いあまって言いました。
 「あなたはいったい毎日どこへ出かけているの?お願いだからおじいさんおばあさんと少しは一緒に過ごしてちょうだい」
 すると、お孫ちゃんは言いました。
 「だって、私、先がもう長くないの。生きている間にいろいろやらなければならないのよ」。
 そして、その日もお孫ちゃんは出かけていきました。
 おばあさんは、こっそり後をつけてみよう、と思いました。
 お孫ちゃんは、スラリと伸びた脚をきっちりしたジーンズで包み、自転車にヒラリとまたがると、風のように去って行きました。
 おばあさんは、ただ茫然と見送るだけでした。
 お孫ちゃんは、それを最後に帰ってきませんでした。
 おじいさんとおばあさんは、あれはいったい何だったのだろうと思いました。
 きっと夢だったのね、とおばあさんは思いました。
 だって夢のように華やいだ時間でしたから、神様がちょっとだけ夢を与えて下さったのかもしれません。
  おわり

posted by hidamari at 22:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 夢小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック