2011年10月12日

ミニミニ小説・ステテコ bP

 その日午後5時前、長崎県全域に大雨洪水警報が気象庁から発表された。
 みどりは勤務先の大学の事務室でその情報を聞いた。
 構内に残っている学生に、帰宅を促す緊急放送が流れた。
 職員の中にはバタバタと慌てふためいて帰宅する者もいた。
 何しろ雲行きがあやしくなっている程度だったので、またいつものように警報はそのうちに解除されるのではと、心のどこかで楽観的考えていたみどりは、いつものように退庁時間まで仕事をした。
 とはいえ、静まりかえった構内が不気味で、さすがに不安になり急ぎ足でバス停に向かった。
 8月の午後5時といえば、普通はまだ昼間の体なのに、今すっかり夜のような暗さだった。
 異様な雰囲気だった。
 これは間違いなく大雨がくる、その時みどりは確信した。
 バスを待つ時間がもどかしく、たまたま通りにいたタクシーに飛び乗った。
 はらはらしながら自宅マンション近くに着いた時、まだ雨は降ってこなかった。
 近くのスーパーで電池とペットボトルの水を確保した。
 夕食の食料も買ってマンションの3階に着いても、まだ雨は降ってこなかった。
 バスタブに急いで水をはり、キッチンの洗い桶やポリバケツにも水を入れた。
 小学6年生のユリ、1年生のミキ、2人の娘たちも家に帰っていた。
 夫の勇太郎だけがいなかった。
 勇太郎は福岡に出張して3日目で、今夜帰宅予定だった。
 みどりが夕食の準備に取りかかった時、突然大粒の雨が降り出した。
 それは部屋の中にいても分かるくらいの、けたたましい雨音だった。
 テレビの時報は6時30分だった。しきりに気象情報を流している。bQへ

(カテゴリー〈短編小説・つぶらなひとみ〉に連載)

posted by hidamari at 22:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 短編小説・つぶらなひとみ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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