2011年11月15日

ミニミニ小説・ステテコbS

bS
 勇太郎のことはこれ以上心配しても仕方なかった。
 ただ、胸の中のモヤモヤとイライラ感は、降りしきる雨音のせいか、勇太郎の謎めいた行動のせいか分からなかった。
 部屋の中は真っ暗だった。
 水道の蛇口をひねると、もう水も出なかった。
 きっとガスも止まっているだろうと思い、それは試すこともしなかった。
 下手にいじると復旧した時、ガス栓が開いていたら、大変なことになると思ったからだ。
 ユリとミキが懐中電灯を取り合っている。
 「こんな時に喧嘩は止めなさい」と、みどりはヒステリックに叫んだ。
 「お手洗いに行きたいのに、ミキが懐中電灯を渡さないの」
 ユリは泣きそうな声を出した。
 「ミキ、お姉ちゃんに渡しなさい」
と、みどりがピシャリというと、「ハーイ」と、ミキは素直に従った。
 しばらくすると、トイレの中から「ママ、トイレの水、出ないよ」という、ユリの声がした。
 「仕方ないでしょう、そのままにしておきなさい」と、答えるしかなかった。
 今この暗闇の中で、携帯ラジオの声を聞くことだけが、外界と繋がっている感じがした。
 寝るには早すぎた。時計の針は8時を過ぎたばかりだった。
 居たたまれなくなったみどりは、すごい雨の降る様子をこの目で見たいと思い立った。玄関のドアを恐る恐る開けてみた。
 ほんのちょっと開けたその時だった。
 どこからともなくすっと黒い人影が現れ、その片足がグッとドアの中に入りこんできた。
 一瞬何が起きたのか理解出来なかったが、恐怖で息が止まりそうになった。(bTへ)

(カテゴリー〈短編小説・つぶらなひとみ〉に連載

posted by hidamari at 22:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 短編小説・つぶらなひとみ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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