2011年12月19日

ミニミニ小説・ステテコbV

bV
 夜が明けるのを待ち構えて、みどりは外へ出た。
 雨はすっかり止んでいたが、目のあたりにする周りの景色は一変していた。
 川は、水嵩は減っていたが、ガレキや家財道具、生木まで積み上げられて、川の態をしていなかった。
 山手一帯は、鉄砲水の被害を受けていた。
 家屋は崩壊され、家財道具も道路も畑も土砂で埋まった。
 住人は避難していて、大かたは無事だった。
 しかし痛ましい犠牲者もいた。
 小学生と中学生の姉妹が逃げ遅れて亡くなったという話は、みどりにとって身につまされる悲劇だった。その小学生の妹は、娘のユリと同級生で仲良しだったのだ。
 姉妹の母親は、しばらく正気を失ったほどの気の落としようだった。
 夏休み中というのもあって、たまたま母親が職場の慰安旅行に出ていた。
 父親は職場から帰る途中だった。
 道路が崖崩れで寸断されたため、家にたどりつくことが出来なかったのだ。
 姉妹は父の帰りを待って、避難が遅れていたということだった。
 みどりが、夜が明けて真っ先に目にしたのは、国道に則した山が崩れ落ち、山肌をあらわにしていた光景だった。
 後で分かったのは、その崩れた山塊は国道を崩壊し、国道下にある人家を襲った。
 そしてその家では、前日娘たちが孫を連れて泊まっていた。その家族全員9人が土砂の中に埋まり、尊い命を失くした。
 結局その長崎大水害で、299名の尊い命が奪われた。
 それは、悪夢としかいいようがない、大惨事だった。
 みどりの家に泊まった不可解な侵入者2人連れは、その朝、「これから歩いて帰ります」といって、土石の積った道をかき分けて帰っていった。bWへ
(カテゴリー〈短編小説・つぶらなひとみ〉に連載

posted by hidamari at 23:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 短編小説・つぶらなひとみ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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