2015年02月07日

読後感“私の男”

 桜庭一樹著  2007年文藝春秋社  2008年直木賞受賞作品

 私の財布の中にこの本の名前をメモった紙が昨年の暮れから入っていた。年が明けて暇になったら図書館で借りて読もうと思っていたのだ。で、先々週金曜日に図書館に出向いたら、一発で借りることができた。
 何か映画にもなっていたらしいが、私は何の評判も知らなかった。ただ、直木賞受賞作品ということと、「私の男」という怪しいタイトルに興味を持っただけである。著者名を見て驚いた。男名だったから。受賞時、テレビや写真で、確か女性だったような。
 読んでみて、はっきり作者は女性だと認識した次第である。
 さて、読後感であるが、
 まず、この作品のジャンルは、恋愛小説なのか、サスペンスなのか、あるいはドキュメンタリーなのか、はたまたヒューマンものなのか、単なるエロ小説なのか?
 どれにもあてはまらない。人間としてのタブーの世界に踏み込んだ現実を、赤裸々に描くことが文学なのか、何か意図はあるのか。でもこれが直木賞を受賞したわけで…。
 
 この小説には、テーマがいくつかある。
 実際にあった奥尻島大地震・つなみ、 船員家族の不倫による不義の子誕生、近親相姦、性的虐待、殺人等である。
 物語は震災孤児の女の子が大人になるまでの壮絶というべき生き様である。
 それはおぞましいというか、へどが出るようなものだった。でも読者は恐いもの見たさというか、半分目隠しながらも、つい覘いてしまうような、非人間つまり獣のような生活だったのである。
 主人公花は、心地良く生きるためにはこうした方がいいという本能を常にかぎわけていたのだろう。そのために殺人まで犯してしまう。圧巻は娘をかばうため、父親まで殺人を犯す。
 当然親子の行く先は、破滅か死しか考えられないこと。
 なのに、物語は、娘は普通の結婚をして、父親は失踪というかたちで終わった。
 えっ!これって、ありなの? いけないでしょう? それこそ世の破滅になるのでは。
 この前の東日本大震災でも、人生を狂わされた人たちが数多くいるだろう。皆健気に生きているはず。
 花の心の根底に常にあったのは、家族に取り残された悲しみ、疎外感だったのではなかろうか。肉親愛を乞い続けた結果がこうなってしまったのでは。悲劇だった。
 もうひとつこの小説で特記すべきは、時間的に過去に遡って書いてあること。
 私は当然1章から読み始めた。
 2章に入った時、あれっ!これ、1章の前段ではと感づいた。
 で、6章から逆に読んでいった。
 結末が分かって、読むのもありかな。いろいろ吟味しながら読めるから。

 ちなみに映画のキャスティング、観てはいないが、あっているような。
 二階堂ふみさん、童顔ながら身も心も長けている役、上手い。
 「官兵衛」での淀殿役、最初はどうかな、と思ったが、だんだんはまってきたのには驚いたもの。
posted by hidamari at 13:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 読後感・映画の感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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