2006年12月05日

童話・つぶらなひとみ

 健太の悩み
 健太はもうすぐ3歳になります。一人っ子です。おとうさんとおかあさんが会社勤めなので、毎朝2人で、健太を保育園へ送ってくれるのです。
 
 健太は、朝のこの時間が大好きです。なぜなら、おとうさんとおかあさんが、健太を中に挟み、手を引いてブランコをしてくれるからです。

 実は、そんな健太に、今悩みごとがあるのです。
 おとうさんとおかあさんが喧嘩ばかりしているのです。
 そして、おかあさんがおとうさんにむかって「もう私たち別れましょう」と、どなったりするのです。
 健太は、この「別れましょう」ということばが大嫌いなのです。
 なぜなら、おとうさんとおかあさんが別れてしまったら、いったい僕はどうなるのだろう、と思うのです。
 おとうさんもおかあさんも大好きなので、どちらに付いていったらいいか分からないのです。
 それに、おかあさんはその時、健太を連れていくとは言わないのです。おかあさんは健太を好きではないのじゃないかととても心配なのです。

 保育園のお迎えは、たいていおかあさんが来てくれます。
 今日はお迎えの後、おかあさんは健太を床屋さんへ連れて行きました。
 おかあさんは床屋のおじさんに「散髪が終るころ迎えに来ます」と、言っていったん床屋を出ていきました。

 散髪が終る頃おかあさんは、健太を迎えにきました。
 おうちに帰ると、おかあさんは大急ぎで夕ご飯を作りました。
「おかあさん、今日のおかずお魚なの?」
 健太はまな板の上のお魚をみて言いました。
 健太はお魚が大好きなので、おかあさんと一緒にお魚屋さんへいくのを楽しみにしていました。
 だから、いつのまにおかあさんがお魚屋さんへ行ったのか、不思議だったのです。それで、
「いつ、お魚屋さんへ行ったの?」と聞きました。すると、おかあさんは
「健太と床屋さんで別れてから行ったのよ」とこたえました。
 健太は突然胸がドキドキしました。
「おかあさんと僕はもう別れたの?一緒に住めないの?」
 おかあさんはびっくりしました。
「えっ!何を言っているの」
「だって、おかあさんと僕、もう別れたんでしょう?」
「ああ、あれは健太が散髪している間だけ別れたっていうことなのよ。おかあさんは健太が大好きなのに別れるはずないでしょう」
 おかあさんは何気におとうさんに「別れましょう」と言っていることを、反省しました。
 健太が小さな胸を、こんなに痛めていたことを知らなかったのです。
 おかあさんは「ごめんね」と言って、健太を強く抱きしめました。

(上記童話集は、童話〔つぶらなひとみ〕で掲載します)
posted by hidamari at 23:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 短編小説・つぶらなひとみ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年11月29日

童話・つぶらなひとみ

 おつかい 
 鈴ちゃん、小鈴ちゃん、美鈴ちゃんは仲の良い三姉妹です。
 末っ子の美鈴ちゃんは甘えん坊です。
 ある日、おかあさんが、三人の娘に言いました。
「あなたたち3人で、お祖母ちゃんのうちまで、お届けものを持っていってほしいの」。

 美鈴ちゃんは、遊び疲れていました。それに日も暮れかかっていたし、お腹も減っていました。
「わたしは、疲れているし、お腹も減っているので行きたくない」と、言いました。
 すると、鈴ちゃんも、小鈴ちゃんも言いました。
「私たちだって同じよ。だから美鈴ちゃんも一緒に行こうよ」。
 でも、美鈴ちゃんは、3人で行かなくてもお姉さんたち2人で行けば十分だと思ったのです。
 いつものように、「行きたくない。行きたくない」と、だだをこねました。

 鈴ちゃんと小鈴ちゃんは、「美鈴ちゃんはいつもずるいんだから」と言って、仕方なく2人だけでおつかいに出かけました。
 美鈴ちゃんは、心の中で「やったあ」と思いました。

 おかあさんは、「夕食はみんな揃ってから食べますよ」と、美鈴ちゃんに冷たく言いました。
 美鈴ちゃんは、そのうちに眠ってしまいました。

 しばらくして美鈴ちゃんは、まわりが賑やかなので、目が覚めました。
 鈴ちゃんと小鈴ちゃんが帰ってきたのです。
 おとうさんも会社から帰ってきていました。
 鈴ちゃんと、小鈴ちゃんは、お祖母ちゃんから、お礼だといって、それぞれ大きなまりを貰っていました。
 美鈴ちゃんは、そのまりが、欲しくてたまりません。
 そこで、また「まりが欲しい」とだだをこねました。
 おかあさんは「いくら泣いても美鈴にはないのよ。おつかいに行かなかったのだから」と、言いました。
 それでも欲しくて、美鈴ちゃんは泣き続けました。

 ついに、お父さんが言いました。
「鈴はお姉ちゃんだから、美鈴に譲ってあげなさい。鈴には父さんが明日買ってくるから」。

 鈴ちゃんは、渋々大きなまりを美鈴ちゃんに渡しました。
 美鈴ちゃんは、まりを抱きしめながら、泣くのを止めました。
 でも、とても複雑な気持ちでした。
― 私もおつかいに行けばよかった ― と後悔しました。

(創作童話を、カテゴリー童話〔つぶらなひとみ〕に掲載します)

posted by hidamari at 13:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 短編小説・つぶらなひとみ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする