2011年08月13日

夢小説(風に消えたお孫ちゃん)

 孫が欲しくてたまらない、おじいさんとおばあさんがいました。
 2人はいつも神様にお祈りしていました。
 「私たちはもう先が長くありません。1日も早く孫に会いたいのです。どうか孫をお授けください」と。
 ある日、その願いは意外な形で実現しました。
 突然おばあさんに孫が生まれたのです。
 おばあさんのお腹が大きくなった訳でもないのに、ある朝かわいい女の赤ちゃんがおじいさんとおばあさんの間に寝ていたのです。
 2人は「孫だ、孫だ」と大喜びしました。
 女の子は、たいそう美人さんでした。
 ところが、そのお孫ちゃんは、毎日、目に見えて大きくなり2〜3年もすると、もうりっぱな大人になってしまいました。
 おじいさんとおばあさんは、唖然とするしかありません。
 抱っこする暇もなかったし、髪をすいてやることも出来なかったし、お手手つないで散歩も出来なかったし、かわいいお洋服を縫ってあげることも出来なかったし、お料理を教えてやることも出来なかったのですから。
 今では毎日出かけて行っては、夜遅くしか帰ってきません。
 おばあさんは、思いあまって言いました。
 「あなたはいったい毎日どこへ出かけているの?お願いだからおじいさんおばあさんと少しは一緒に過ごしてちょうだい」
 すると、お孫ちゃんは言いました。
 「だって、私、先がもう長くないの。生きている間にいろいろやらなければならないのよ」。
 そして、その日もお孫ちゃんは出かけていきました。
 おばあさんは、こっそり後をつけてみよう、と思いました。
 お孫ちゃんは、スラリと伸びた脚をきっちりしたジーンズで包み、自転車にヒラリとまたがると、風のように去って行きました。
 おばあさんは、ただ茫然と見送るだけでした。
 お孫ちゃんは、それを最後に帰ってきませんでした。
 おじいさんとおばあさんは、あれはいったい何だったのだろうと思いました。
 きっと夢だったのね、とおばあさんは思いました。
 だって夢のように華やいだ時間でしたから、神様がちょっとだけ夢を与えて下さったのかもしれません。
  おわり

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2011年02月14日

夢小説・再会

bT
 「譲治君すっかりりっぱになったわね」
 「そんなこともないけど、…緑子ちゃんがまだ結婚していなかったなんて驚いたよ」
 きっと、譲治君の家の人が面白半分に告げたのだと思った。
 「譲治君はもちろんお子さんもいるのでしょう?」
 「うん、5人いる。上は高2で1番下はまだ2歳」
 緑子は声を呑んだ。
 もしかしたらまだ独身ではと云う期待がなかったといえば嘘になる。
 だから本当は「結婚は?」と聞きたかったところをあえて「子供は?」と聞いたのだ。
 そんな微妙な心に、この5人という数字には、驚きを通り越して、何それ!と可笑しかった。
 2人の過去の一切が、まるでなかったことのように錯覚した。
 「へえー、早くに結婚したんだ」
 「うん、上京して働きながら二部の工業大学へ行った。日曜毎にギターのサークル活動もやっていて、そこで保母をしていた今の嫁と知り合ったの。彼女、実家が埼玉だったので、1人暮らししていて、そのうちに2人で住むようになって、向こうの親に会う前に子供が出来て、…いわゆる出来ちゃった婚。僕大学を卒業して都庁の建設部に就職したんだ。都庁に入る時も頑張ったけど、入ってからも建設業関係の資格を7個も取ったんだよ。50歳になったら、都庁を退職して埼玉で建設業関係のコンサルト会社を設立するつもりでいる。嫁の実家が建設業をしているんだ。嫁は今も子育てしながら保母をしている。何しろ5人子供がいるから、頑張らないとね。自分で事業すると、収入は3倍にはなると思うし」
 緑子は、ただすごいと思った。
 譲治君と運命の別れをして、夫々の環境がこんなに違ってしまったなんて。
 このことを緑子の父親はどんな風に感じているのだろうか。
 中学生くらいの孫がいて当然なのに、2人の娘は揃って独身、未だに親元にいる現実を。
 一方、娘の元彼、しかも自分が引き裂いた譲治君は、りっぱに成功して、5人の子持ち。
 緑子は可笑しくてたまらなかった。
 20年の歳月が過ぎた今の2人、それが不思議と可笑しかった。
 「緑子ちゃん、もしかしたら僕のことが原因で結婚しなかったの?」
 「とんでもない。何度か恋愛もしたし、お見合いもしたよ。結局縁がなかったのね」
 ほんとうのことだった。
 20年ぶりに、時の経過を再確認して、その人生の面白さに緑子はただ可笑しかった。
 だって、5人も子供産むかなぁ?…
    了
 (カテゴリー、夢小説で連載中の〈再会〉は終了します。朝方見る夢を小説にするのは面白いです。ただ、忘れないうちに書きとめることが大変なのですが)

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2011年02月12日

夢小説・再会

bS
 緑子はすっかり落胆していた。
 譲治君の変貌ぶりにではない。譲治君は年相応にかっこ良かったし、それに比べ緑子の容姿は、年相応に下り坂だったけど、それは年月が経っている以上仕方のないことだったし、決してそんなことではなかった。
 また、譲治君が、思っている以上にクールだったからでもない。
 緑子が落胆したのは、再会の仕方だった。
 2人だけで会いたかった。そっちの方がロマンティックだと思った。
 でも一方では、そんな風に思った自分が嫌だった。
 緑子は、譲治君の家と反対側の川沿いの土手を放心状態で歩いていた。
 彼女の気持ちを察しているのか、静かに寄り添うように付いてきていたキナコが、突然吠えだした。
 「どうしたの?キナコ」と、我に返った緑子はキナコをなだめた。
 その時、突然後ろから肩に手をかけられた。
 緑子は飛び上がらんばかりに驚いた。
 振り向くと、譲治君が笑顔で立っていた。
 そして、「緑子ちゃんに会えると思ってお宅を訪ねたのに、すぐに出ていくなんて」と言った。bTへ
(カテゴリー夢小説で連載)

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2011年02月11日

夢小説・再会

bR
 知らず知らずのうちにウキウキしている緑子は、脇目もふらず帰宅している自分に、「いったい何を期待しているのだろう」と、いささか恥ずかしさを感じていた。
 しかし、譲治君に会いたいという気持ちは抑えられなかった。
 帰ってすぐキナコを散歩に連れていけば、譲治君に会えるかもしれないのだ。ただ会ってみたかった。後のことは何も考えていなかった。

 「ただいま」といつものように玄関を入ると、いつもと様子が違う。居間の方から話声が聞こえてきた。
 見慣れない男物の靴がある。こんな時間に来客なんて珍しかった。
 まさかという気持ちで居間へ入った。
 そこには、まさかの譲治君が因縁の父親と談笑している姿があった。
 その父親がにこやかな顔で言った。
 「緑子、譲治君がお祖母さんの13回忌法要で帰省しているそうだ。それで家にも挨拶にきてくれたんだよ」
 「久しぶりです。こんにちは」と、譲治君は笑顔だったが、何の感慨もなさそうに言った。
 「こんにちは、お久しぶりです」と、緑子も丁寧に頭を下げた。
 こんな場面は想像していなかった。
 「私、キナコを散歩に連れていくから」と父親に言って、緑子は逃げるようにその場を去った。
 譲治君はすっかり大人になって、りっぱになっていた。それに前より男前にもなっていた。
 確かに譲治君には違いないのだが、20年前の彼とは全く別人だった。bSへ
(カテゴリー夢小説で連載)


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2011年02月10日

夢小説・再会

bQ
 緑子の家では犬を飼っている。
 種類はヨークシャテリアで、メス、名前はキナコという。
 キナコはまだ3歳なので元気いっぱいだ。散歩が大好きである。
 朝起きるとすぐ、キナコのトイレタイムを兼ねて散歩させるのが姉の碧で、夕方の散歩は妹の緑子の役目になっている。
 その日の朝、碧は散歩から帰るなり緑子に言った。
 「あなた知っているの?譲治君が帰っているのを」
 「えっ!知らない。譲治君と会ったの?」
 緑子はいっしゅんパニックになった。
 譲治のことを全く思い出さなかったとは言わないが、20年前に別れたきりで、その後会ったこともなければ、彼の噂を聞くこともなく過ごしてきた。緑子の心の中には、もう譲治の影はなかった。
 それなのに、譲治が帰っている、と聞いただけで、緑子の頭の中に、過去の記憶がフラッシュがたかれたように蘇ってきたのである。
 「ううん、直接会った訳ではないの。譲治君の家の前を通った時に見かけたのよ。遠目だったけど、確かにあれは譲治君だったわ」
 「ふうん、20年ぶりよね、何しに帰ってきたのかしら」
 「実家ですもん、用事があるんでしょうよ」
 「そうだけど、お祖母さんのお葬式にも帰ってこなかったよ」
 「なんでそれが緑子に分かるの? 帰ってきていたかもよ。 まあ、彼が帰ってきても、来なくても、私たちには関係ないか」
 その日の朝、碧が話してくれた情報は、緑子を1日落ち着かせなかった。bRへ
(カテゴリー夢小説で連載)

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2011年02月04日

夢小説・再会

bP
 緑子は39歳、会社員である。 家族と一緒に暮らしている。
 家族は両親とこれまた独身の42歳の姉碧(あおい)の4人である。
 緑子は、結婚もせず、いつの間にか39歳になっている自分が信じられないでいる。
 毎日悪い夢を見ているような気がしてならないのだ。
 25歳くらいまではそれなりに濃い人生を送っていたような気がするが、その後はたんたんとした生活だったせいか、あっという間に過ぎ去った。
 精神的には未だ25歳くらいなのに、鏡の中の姿は確かに40歳のおばさんであることに、いいようのない恐怖と不安が押し寄せてくる。

 緑子は子供の頃から両親に可愛がられて育った。
 両親の愛は、娘が成人して恋愛した時、怒りに変わった。
 緑子が結婚したいと連れてきた男性は、とうてい眼鏡にかなうものではなかったからだ。
 その相手は、こともあろうに近所では知らない人がいない曰くつきの男性だった。
 緑子の両親ならずとも、娘の相手として許される存在ではなかった。
 譲治は、どこの誰だか分からない男が父親の、しかも青い目をした私生児だったのである。
 母親は赤ん坊の譲治を祖母の元に置いて、新たに結婚し、去っていった。
 緑子と譲治は近所同士の幼な友だちだったが、大人になって、真剣な愛へと発展させていた。
 譲治は、緑子と結婚どころか付き合いさえ遮断された時、おもいあまって密かに自殺を図った。
 それは幸いに未遂に終わった。
 そのあと故郷を後にして東京へと旅立っていった。
 緑子21歳、譲治20歳の時であった。bQへ

(カテゴリー夢小説で連載)

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2010年11月04日

夢小説・猫学校

bU
 昼間のその路地は、どこにでもある薄暗くて湿気の多い辛気臭い通りだった。
 今まで私が見向きもしなかったはずだ。
 しかし、今日は違った。
 いったい昼間の学校はどんなたたずまいをしているのか、見てみたかった。
 ずんずん進んでいくと、汚いブロック塀に突き当たった。
 よく見ると、横の方に錆びた柵の扉が半開きなっていた。
 おそるおそる中に入った。
 あちこちにペンペン草が生えているだけの、ただの空き地だった。
 以前にはきっと家が建っていたのだろう、セメントが覗いている箇所もあった。
 昨夜確かに、広間でダンスをした洋館は、影も形もなかった。
 これはどういうことだと不思議に思ったが、次第に私の頭の中で、事態が消化されていった。
 夜になると、また昨晩のようにちゃんと学校の建物が現れ、講義を聞き、舞踏会が催されることは間違いなかった。私にはそうなる確信があった。
       了
(カテゴリー夢小説・猫学校)

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2010年11月02日

夢小説・猫学校

bT
 目が覚めた時は、太陽は真上より西寄りだったから、既にお昼は過ぎていたのだろう。
 私はお腹が減っていることに気が付いた。
 時々、お昼前に、近くに住むおばあさんがお地蔵様にお参りにくる。
 お花を供えたりお水を供えたりするのだが、ついでに私にもご飯を持ってきてくれる。
 今日は新しい花が挿してあるのでおばあさんが来たのだ、と思った。
 私には…?と周りを見回すと、石堂の奥の方に缶詰から出したキャットフードが、ちゃんとお皿に入れて置いてあった。
 おばあさん、ありがとう!
 私は心から感謝した。
 優しい人はいい、人間は嫌いだが、優しい人は好きだ。
 おばあさんは、私にそんなにベタベタしないが、それとなく優しくしてくれるし、眼差しが温かいのだ。
 私も、おばあさんに媚を売るようなことはしない。
 でも、感謝の眼差しで仰ぎ見るし、ニャーン!と毎回挨拶だけはしている。
 おばあさんも私の気持ちは察してくれているはずだ。
 おばあさんのキャットフードを食べて、私は散歩に出た。
 ふっと昨夜のことを思い出した。
 「学校に行ってみよう」と思った。bUへ
(カテゴリー夢小説で連載)

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2010年10月30日

夢小説・猫学校

bS
 部屋が満タンになると、自動的にドアが閉まった。
 すると、貫録のある校長先生がおもむろに挨拶をした。
 「みなさん、こんばんは、今夜もよくお集まりくだいました。明日また元気でここに来られるように、今夜もしっかりお勉強しましょう」とにこにこしながら、皆を見まわした。
 それから、
 「最近交通事故が増えている、大通りを渡るときは信号が青になった横断歩道を渡るように」とか、
「性質の悪い子供から虐待を受けている猫が急増している、子供には近づくな」とか、
 「人間社会に依存しなければ生きてはいけないが、住家のゴミをあさったり花壇で糞をするな」、とか、私の知っていることばかりを、くどくどと話しだした。
 私はがっかりした。
 やだなあーこれが学校?
 何だか眠くなった。
 うつらうつらしていると、急に周りが騒がしくなった。
 皆が輪になって、何とフォークダンスを始めたのだ。
 マイムマイムの曲がボリューム大で流れている。
 隣にいたお兄さんが私をむりやり輪の中に連れ込み、曲に合わせて引っ張りまわした。
 心地よいリズミカルな音楽に合わせて踊るうちに、なんだか不思議と楽しくなった。
 オクラホマ・ミキサーの曲が流れると、お兄さんは私と肩を組んだりした。
 途中で休憩も入り、食事や飲み物も振る舞われた。
 朝方まで踊ってくたくたになった。
 そして朝日が昇る前、お開きになった。
 すると、あっという間に猫たちはいなくなった。
 お兄さんもいなくなった。
 私も、ねぐらにしている地蔵さんの石堂に戻って泥のように眠った。bTへ
(カテゴリー夢小説で連載)

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2010年10月27日

夢小説・猫学校

bR
 その小さな路地は、道路にある街灯からはちょうど死角に当たり、真っ暗だった。
 しかしいったんそこに入ると、ずっと奥の方に背の高い洋館建てのお家があるのが、くっきりと浮かんで見えた。
 なぜ見えたかというと、その家の外灯が明々と点いていたからだ。
 驚いたことに、その明りに誘われて、ソロリソロリと歩いて向かっていたのは私だけではなかった。
 気が付くと、どこから来たのか、この街にこれほどたくさん猫がいたのかと思うほど、たくさんの猫が、集まってきていた。
 私はあの家できっと何かがあるのだと思った。
 「いったい何事ですか?あそこで何かあるのですか?」と、私の横を歩いていたお兄さん風の猫に聞いてみた。
 「おや、君は新入りかい?行けば分かるよ」と言い残すと、私を追い抜いていった。
 行くしかないと思った私は、彼に追いついて後ろを付いていったのだ。
 その家は教会のように大きかったが、片ドアだけの小さな玄関は開け放たれていた。
 入ってびっくりした。
 3メートルほどの廊下を通り抜けると、ワンフロアが広がっていて、周りは教会のようなステンドグラスに囲まれていた。
 ここは教会なの?と一瞬思ったが、キリスト像もマリア像もなかった。
 ステンドグラスの壁際に長椅子が並んでいるだけだった。
 前の方が1段高くなっていて、そこに貫録のあるオス猫と、優しそうなお姉さん猫が鎮座していた。
 集まった猫たちは中央の板の間に次々と席を取っていった。
 私はさっきから後をつけていたお兄さんの横に座った。
 「ここはいったい何なのですか?今から何が始まるのですか?」と再び尋ねてみた。
 「ここは猫の夜間学校だよ」
 「えっ?学校?そんなものあるのですか?」
 「知らなかったの?」
 「わたしも入れる?」
 「勉強したい者は、誰でも入れるよ」
 私は、今まで1人ぼっちだったから、何も知らなかったのだと思った。
 こんなにきれいな所で勉強出来るなんて夢のようだった。
 あたりを見回すと、どの顔もイキイキしていて輝いていた。
 ワクワクする気持ちを抑えながら、私は今から何が始まるのか、興味津津だった。bSへ

(カテゴリー夢小説で連載)


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2010年10月24日

夢小説・猫学校

bQ
 目が覚めたら太陽が西の空にあった。
 私はピョンと歩道に飛び降りた。
 辺りをぐるっと見回す。
 いつもと何も変わらない。
 いろんな人が通るが、誰も私のことをかまってくれない。
 そんなことはちっともかまわないが、時々「しっ、こらっ」というヤカラがいる。
 そんな時はフンと睨みつけてやる。
 私は今お腹がへっているのだ。食事にありつく算段をしなければならない。
 裏通りは飲み屋街、そろそろお店を開店する時刻だ。
 私は界隈を物色しながら、そろりそろりと歩きまわる。
 するといい匂いがしてきた。
 ぱんぱんに膨らんだポリバケツからだ。
 ヒョイと飛びのると、フタは簡単に開いた。
 今夜もご馳走にありつけた。たらふく食べて満足した。
 再び商店街へ行き、すっかり夜のとばりがおりた道路を散歩していると、通ったことのない路地が目に入ったのだ。
 幅が1mくらいしかない小さな路地だったが、私はなぜかそこに吸い込まれていったのである。bRへ
(カテゴリー夢小説で連載)

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2010年10月20日

夢小説・猫学校

bP
 私は毎日1人ぼっちだが、寂しいとか退屈だとか思ったことはない。
 私の住処は春日町という商店街である。
 毎日好きなように暮らしている。
 お腹がへったら食堂界隈を廻ると、何かしら食べ物にありつける。
 私は女の子でまだ若い。身体はすこぶる元気なので動き回るのも好きだが、時々ランドセルを背負ったやんちゃな男子に蹴られたりするので、たいてい高い石塀に上っている。
 そこから行き交う人々を眺める。
 楽しそうにおしゃべりしながら歩いているおばさんたち、スーパーへでも行くのかしらん。
 しかめっ面でちょこちょこ歩いているおじいさん、何の用事があるのかしらん、あれはもしかして散歩?
行き交う車の流れを見るのも好きだ。
 それにしても、ひっきりなしに行き交う車、いったいどこへ何しに行っているのかしらん。
 じっと見ていたら眠くなったよ。
 しばらく寝よう。bQへ
(カテゴリー夢小説で連載)

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2010年08月14日

夢小説・子取り鬼

bT
 目が覚めたのは翌日の朝でした。
 私は、恐る恐る部屋にある私専用の小さな鏡台の前へ行きました。
 鏡には、青白い顔で髪もボサボサでしたが、忘れるはずがない人間の私がいました。
 私はカメの姿から人間に戻ったのです。
 昨日までは、生きていることがただ面倒だったのに、今日は、生きていることが何という喜びでしょう。
 まるで、お母さんのお腹の中から初めてこの世に出てきたような気がしました。
 私は人間なんだ。しかもこんなにまだ若い。
 心がウキウキ踊りだすようでした。
 階下に降りていってシャワーを浴びました。
 まず、美容院へ行こう。
 そしてハローワークへ行って仕事を探そう、と思いました。
 お母さんにそのことを言うと、「お母さんはずっとそのことを待っていたんだよ」と言いました。
 泣いているようにも見えました。
 そして
 「外へ出る時は、窓を閉めて行ってね、昨日カメちゃんが外へ出てしばらく行方不明だったのよ」と、言いました。
 「カメ、いつから飼っているの?」と聞くと、
 「変な子ね、あんたに頼まれて先週買ってきたんじゃない」と言いました。
 そういえばそんなことがあって、しょっちゅうカメを眺めていたような気がしますが、すっかり忘れていました。
 学校の体育館から、今日も子供たちのキャーキャー騒ぐ声が聞こえます。
 きっと、あのハンサムな先生と子供たちで、子取り鬼ゲームをやっているのでしょう。
 ハローワークから帰ってくる時、校門の前で、下校してくる子供たちの集団と会いました。
 「昨日体育館にいたカメ、どこへ消えたんだろうね。クラスで飼いたかったのに残念だったよなー」
 「きっと、飼い主の家へ帰ったんだよ」
 そんな会話が、確かに私に聞こえてきたのです。

  子取り鬼 了

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2010年08月12日

夢小説・子取り鬼

bS
 「きっと学校の近所に飼い主がいるはずだ。校門の横に〈カメを預かっています〉という貼り紙を出そう。飼い主が見つかるまで、教室にある水槽に入れて、みんなでめんどうみよう」と、先生は言いました。
 そして笛をピーと吹きました。
 「集合!子取り鬼の続きをやるぞ!」
 「先生!授業が終わるまでここに放っていていいですか?」
 「それまでは、大丈夫だろう。置いときなさい」と先生は言いました。
 男の子は、そっと私を床の上に置きました。
 私は、一時も早くここを逃げ出さないと大変なことになる、と思いました。
 幸い窓からすんなり外に出ることができました。
 来る時はそろそろ歩いてきたのですが、帰りはほうほうの体でお家へ辿りつきました。
 そして、洗面所へ駆け込み、不安というより恐怖心いっぱいで鏡の前に立ちました。
 そこには、私の姿はなく、下の方に小さなカメの姿がありました。
 恐れていた通り、紛れもなく私はカメの姿になっていたのです。
 そんなことってあるのでしょうか。
 ワナワナと座りこんでしまいました。
 これから私はいったいどうなるのでしょうか。
 こんな時なのに、私は自分がとても疲れていることに気がつきました。
 何年かぶりに外に出たことや、走って家に帰ってきたことが、とても身体に堪えたのだと思います。
 とにかく眠たかったのです。
 ひとまず寝ようと思いました。
 2階の自分の部屋に戻ると、なぜか机の上に水槽がありました。
 その横にはもちろん私がいつも寝ているベッドもあります。
 私はカメの姿をしていますが、人間です。
 迷わず布団の中にもぐりこみました。
 そしてそのまま泥のように眠ってしまいました。bTへ

 (カテゴリー〈夢小説・子取り鬼〉に連載)

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2010年08月10日

夢小説・子取り鬼

bR
 私はあかず先生の顔ばかり見ていました。
 すると先生は急に笛をピーと吹きました。
 私に気が付いたのでしょうか。
 いいえ、そうではありません。
 「よーし、ここまで、5分休憩する」と大きな声で言いました。
 生徒たちが「ワアーイ」と言いながらドオーと私の方に寄ってきました。
 窓が床の方にあるので、そこを目がけてきたのです。
 絶体絶命です。
 と、思いきや、
 「あれ!カメ!カメがいるぞ」
 「うそ!ホントだ。カメだ」
 「カメだ、これミドリガメだよ。まだ子供かな」
 カメだ、カメだと生徒たちが口々に言うのです。
 私に気がつかないばかりか、そのカメどこにいるのよ、と私は思いました。
 ところが、不思議なことに、どうみても、生徒たちはいっせいに私を見ているのです。
 その時、1人の男の子がヒョイと私を手のひらに載せるではありませんか。
 えっ!小さな子供が私を手のひらに載せるなんて!
 それはびっくりしました。
 先生が近寄ってきました。
 私はドキドキしました。
 だって私は先生にポーッとなっていましたから。
 「皆、どうしたんだい?」
 「先生、ここにカメがいました。ミドリガメでしょう?これ」
 「どれどれ、… そうみたいだね。どうしたんだろう、こんなところに居るなんてありえないよ」
 いったい、私の身に何が起きているのでしょうか。
 何が何だかさっぱり分かりませんが、ただ頭の中に黒い不気味な霧がモクモク立ち上っているのを感じていたのです。bSへ

 (カテゴリー〈夢小説・子取り鬼〉に連載)

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2010年08月08日

夢小説・子取り鬼

bQ
 幸い家には誰もいませんでした。
 私は、玄関から表へ出て道路を渡り小学校のグランドに侵入しました。
 さすがにグランドの中央を横切るのは、はばかられました。
 トラックの外側に沿って、そっと歩いて行きました。
 体育館の入り口は、開いたままになっていましたので、これ幸いと足音を忍ばせ身を屈めて中に入っていきました。
 そこでは低学年らしきクラスの体育の授業が行われていました。
 先生は若くてハンサムで、しかもとても優しそうな男性でした。
 私は引かれるように、それでも見つからないよう窓際の壁に沿って進んでいき、先生がよく見える位置で座りました。
 「さあー、行くぞー」と先生は大声を出しました。
 生徒たちは数珠つなぎに腰を掴んで並び、最前の生徒が手を広げてガードするかっこうをしました。
 そうです。先生が鬼、最前の子供が親役、子取り鬼のゲームが始まったのです。
 「ウワォー」と言いながら、先生は最後尾の生徒を追いかけます。
 親役の生徒が「ダメダー」と言いながら、阻止します。
 生徒たちは、キャーキャー言いながら逃げ回るのです。
 先生は怖い顔を作っていますが、なぜか慈愛に満ちた顔に見えました。
 小さな生徒が最後尾にきた時、先生はすぐ捕まえられるのに、なかなか捕まえませんでした。
 どの子も、みんな楽しそうでした。
 私はふっと思いました。
 いくら窓際でひっそりしているとはいえ、誰も私の存在に気付かないなんてあるのでしょうか。
 私は、キャーキャー騒ぐ実態が分かったので、もう満足でした。
 見つかって追い出されることも覚悟していたのです。bRへ

(カテゴリー〈夢小説〉に連載)


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2010年08月02日

夢小説・子取り鬼

bP
 私はずっと引きこもっています。
 といっても短大を出てフリーターとして2年くらいは働いていました。
 パン工場、スーパーでのお総菜作り、宅急便の仕分け等職場を転々と変わりました。
 一生懸命働いても賃金がとても安いので、ずっと実家を出ることができませんでした。
 それに友人もできませんでした。
 そんなある日、朝寝坊をしてしまいました。
 とたんに何だか職場へ行く気がしなくなり、それ以来、自分の部屋から出られなくなったのです。
 それから3年も過ぎてしまいました。
 親は「いい若いものが部屋でウダウダしているのなら死んでしまえ」と言います。
 私もそう思います。
 でも死ぬのも面倒くさいです。
 私は女の子なのに、もうずっと鏡を見ていません。もちろん化粧もしません。いったい自分が今どんな状態になっているか見当もつきません。
 でも、そんなこともちっともかまわないのです。
 だって私の頭の中は無です。ただ生きてはいるのです。
 ところが、最近気になって仕方ないことがあります。
 それは窓から風に乗って聞こえてくる、子供たちのキャーキャー騒ぐ声であります。
 私の家の前は小学校で、前にグランド、その片側に体育館があるのですが、声はその体育館からするのです。
 殆ど毎日午前中に聞こえてきます。
 2階の私の部屋からは、グランドが真下に見えます。
 グランドを横切って行けば体育館はすぐです。
 ある時私は、なぜだか分かりませんが、体育館で何が行われているのか、無性に知りたいと思いました。
 その日、運動場は静まりかえっていましたが、体育館からは相変わらず、子供たちの声が聞こえていました。bQへ

(私はよく夢を見る。その夢がとても面白いので、書きとめてみようと思った。カテゴリー夢小説で綴っていきたいと思う)
posted by hidamari at 21:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 夢小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする